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先日、法隆寺に行ってきました。
人生で二度目の法隆寺で、今回は、秘仏の救世観音特別開扉に合わせての訪問です。
アルカイックスマイルの救世観音は、聖徳太子の怨霊封じとも、供養ともいわれていて、謎の多い仏像です。。
不思議な空気を醸す救世観音と、祀られている夢殿についてお伝えします。
奈良の観光地として、東大寺大仏殿と同じく人気の高いのが、ここ法隆寺です。
日本初の世界遺産登録地であり、聖徳太子が建てた寺としても有名ですね。
ここに祀られている、幾多の仏像や壁画、建築物は、山岸涼子作の「日出処の天子」ファンにはたまらないものが多いんですよね。
私も、初めて訪れたとき、感動と興奮することしきりで、ますます聖徳太子を好きになった思い出があります。
ですが、この作品で描かれていた、太子の私邸・斑鳩宮の夢殿は、太子の没後に建てられたものだったんですね。
作品では、たびたび太子が瞑想する場として登場していました。
創作漫画と史実は異なっていましたが、夢殿の建物は、物語と同じ八角形の八角堂で、実際に目でみると心が高鳴ります。
また、今回は、夢殿に祀られている、秘仏の救世観音も初めて拝することができました。
謎の多い法隆寺のなかでも、この救世観音はナゾだらけの仏像です。
1000年以上もの間、白い布にぐるぐる巻きにされて、封印されていたという救世観音。
今は年に2回、春と秋に限定公開されています。
今年は5月18日までの公開なので、まもなく終了し、次回は秋(10月22日~11月22日予定)になります。
さて、この救世観音、不気味な妖怪のような、凄い妖気の微笑みをたたえています。
仏像の概念が吹っ飛びそうな、日本の他の仏像にないプリミティブ感が漂っていました。
とはいえ、怖くなる、といった感じは、私は受けませんでした。
怖いものみたさというか、微笑みの奥の感情を知りたくなるというか、謎ときをしたくなる、迷宮に入り込む感じといえばいいでしょうか。
決して、笑みが憎しみを内包している、という類のものではなくて、ある種のおおらかさが感じられたのです。
ダイナミックでエキゾチックで、日本って、昔はこんな感じだったの??と問いたくなるような、不思議な気持ちになりました。
この仏像が作られたであろう時代は、大陸、つまり、隋や新羅や百済の技術が入ってきて、その影響が大きかったのではと想像します。
まだ、日本の仏像美術が確立するまえの、仏教渡来直後の世界が匂い立っているかのようです。
日本の原始仏教と、はるかかなたの大陸から伝わってきた、ギリシャやインド、ペルシャなどの異国の美も、この仏像に交じっているかのような妄想に包まれました。
あくまで私の受けた印象なので、歴史学としての正確さはありません。
とはいえ、西大寺の長谷観音を見たときと、似たタイプの感銘を受けたのです。
https://beauty-kireininaru4.com/nara-life-saidaiji-temple-2/
ところで、最近では、聖徳太子は存在しなかった、という説が有力だったりするそうです。
まさか、そんな、と思う世代の私ですが、
夢殿で祀られている、2つの太子像を見たときに、ふと感じました。
やはり聖徳太子はいなかったのかもしれない・・・
それに代わる何某かの人物はいたのでしょうが、伝承されている太子像は、複数の人間の集大成だったり、後世で作られたものだったりするのではないか、という気がしてきました。
なぜなら、その太子像が、本当に立派だったからです。
あまりにリッパすぎて、真実からは遠い気がしてしまいました。
これまで論じられてきた太子像や、創作されてきた太子伝には、やはりとても興味があります。
ですが、今度は、もし聖徳太子が後世に作られたものだったのだとしたら、という前提で、新たな物語を読んでみたいなあ、と期待する気持ちもあるのです。
救世観音さまも、実は、それを待ってられたりしないでしょうか・・・微笑みをたたえながら。