- 投稿 2018/03/29
- NZ生活
ジョンソンは、私がNZ生活最後に住んだ、フラットの管理人でした。
正確には、フラットというより、ボーディングハウスです。
寮のようなタイプで、一種のシェア・ハウスでした。
大型のフラットと言えばいいでしょうか、ニュージーランドにはよくある古い洋館で、全部で22室、カップルも含めると、40人近い人が住んでいました。
とにかく古い洋館で、廊下はギシギシ鳴るし、天井は高いけどその分、暖房が効きにくそうだし、10月(南半球なので春)に引っ越してきたときは、冬はここでは越せないな、と思ったほどです。
実際、冬になる前に出たのですが。
ここに住む前は、ドイツ人、イギリス人の女子と一緒に、タウンハウスのフラットに住んでいました。
ドイツ人の女性が一棟借りをしていて、私たちは又借りのフラットです。
このときのイギリス人女子との共同生活に耐えられなくなって、出ることにしたので、次は、住んでいる人をよくみて決めようと思っていたんですよね。。
ジョンソンは、住み込みの管理人で、このイギリス人女子とのすったもんだ話す私に、同情的に聞いてくれました。
ジョンソンもイギリス人でしたが。
世代が違います。
『その子は若いんだろ、イギリスの若い子は騒がしいよ、でも、ここではそんなことはないからね』、と言ってくれました。
ですが。
そのジョンソン、違う意味で騒がしい人でした。
部屋の古さは、引っ越し前の掃除でカバーしました。
百均(オークランドに日本の百均があるんです)で掃除用具や、整理のための雑貨を買ってきて、数日通って掃除しました。
カーテンもコインランドリーで洗い、天井も棒を駆使して吹き上げ、日本人として最低限、許せるレベルになんとか磨きました。
要らない家具は、ジョンソンが運び出してくれました。
ジョンソン、いいひとね、と、自分で自画自賛するところが、可愛いといえば可愛いタイプでした。
実際に暮らし始めると、住人の年齢層はかなり高いことがわかりました。
ジョンソンからして、元は世界を駆け巡っていた船員さんで、リタイア世代。
北海道にも立ち寄ったことがあると話してくれました。
私の隣の部屋の片方は、もう一人の管理人でもある、ニュージーランド人のリタイア男性。
もう片方は、少し足の悪いリタイア女性、向かいは、60半ばくらいの上品なマダムでした。
ほとんどシニアハウスです・・・
もちろん、若い人もいました。
ニュージーランドは移民が多いので、世界各国からやってきた人たちが、このジョンソンフラットに住んでいました。
イタリア、フランス、ドイツ、ベトナム、フィリピン、中国、地元ニュージーランド人までさまざまです。
ちなみに、館の持ち主は香港チャイニーズで、貿易商もやっていると聞きました。
ジョンソンは、朝シャワーをあびます。
そのあと、ラジオを大きくかけて、管理人のお仕事、共用部分のお掃除をはじめます。
トイレとかキッチンとかですね。
ときおり、住人たちと世間話をしています。
この声がでかい。。。
当時、レストランで働いていた私は、朝はゆっくり寝ていたかったので、このラジオと声の大きさに悩むようになります。
そうはいっても、鍵つきの個室なので、フラットと違ってプライバシーは完全に守れるし、ムリにほかの住人と交流する必要もないし、好きな時に好きな人とだけしゃべればいいので、ずいぶん気は楽でした。
ジョンソンは、足の悪い女性の部屋を、定期的にお掃除してあげていました。
そのジョンソンには、アメリカ系中国人のガールフレンドがいて、通ってきていました。
やるやん、ジョンソン。
ガールフレンド、といっても、ジョンソンと同世代で、シニアどうしのカップルです。
いいやん、ジョンソン。
ガンダルフのような白くて長いあごひげのジョンソンは、いつも親切で、私の文句も聞いてくれて、いつもなんとか解決しようとしてくれました。
車の運転のことについては、キウイ(ニュージーランド人)の運転はひどいから、とにかく気をつけろ、と注意してくれたり。
夜遅くく帰ってくる私のために、勝手口の電気をつけておいてくれたり。
廊下とキッチンの床掃除には、専門の業者さんが週に2回やってきていたのですが、その人と、たまたま洗濯室で会ってしゃべっていたときに、しばらくしてジョンソンが、様子を見に来てくれたり。
何かヘンなことになってないか、心配してくれたようです。。
クリスマスのとき、職場で大量にもらったバナナケーキを、ジョンソンとお隣のジョンおじさんにおすそ分けしたら、あとから、ジョンソンが、チョコレート缶を持ってきてくれたこともありました。
ボーイフレンドと一緒に食べなさい、と言って。
バナナケーキはほんの数キレだったので、エビで鯛を釣ってしまいました。。
やさしいジョンソンは、実生活でも兄弟姉妹がたくさんいる長男で、彼らのために、早くから働きに出たんだそうです。
だから、字が読めないんだ。
と言っていました。
一番下の妹ちゃんは、ポケモンが好きで、日本にいったらピカチュウを買ってきて、と言ったんだとか。
でも、長男のジョナサンは、そんなにきょうだいのために尽くしても、彼らには煙たがれるんだ、と言っていました。
長男というより、父親ですね。
帰ってくると、みんなシュンとしておとなしくなり、でかけるときには、いってらっしゃーいと喜ぶんだそうです。。
そんな妹ちゃんも、もちろんすっかり大きくなって、子どももいて、もうイイおばちゃんなんだそうです。
お向かいのマダムは、会うといつもにこやかに挨拶してくれて、ここはいいでしょ、住みやすいでしょ、といつも言っていました。
生活時間さえ合えば、年をとってから、こういった形でのシェアハウスも悪くないな、
さびしくないし、助け合えるし、と思いましたね。
ジョンソンみたいな管理人がいれば、退屈しない気がします。
私が、彼と一緒に住むからと、ここを出ようとしたとき、ジョンソンは止めました。
夫婦はともかく、ガールフレンドとボーイフレンドが一緒に住むと、必ず後悔するからやめたほうがいい!
あとで、ぜったい、ジョンソンが正しかった、ってことになるから!!
と、泣きジェスチャーもまじえて説得されました・・
ジョンソンのような生き方も悪くないな、と思います。
人の世話をしながら、たくさんの人と交流して、毎日を過ごす。
自分のことは自分でして、ネコを飼って・・
自分の好きなように生きているように見えたジョンソン。
ジョンソンのこと、とても懐かしいです。