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大伴家持の歌のなかで、夏痩せにウナギをすすめた歌があります。
夏の暑さに食が細るのは、今も昔も同じようですね。
大伴家持が詠んだ、ちょっとお茶目な歌をご紹介したいと思います。
土用の丑の日にウナギを食べる、というのは、江戸時代に出来た習慣のようです。
本来なら、ウナギの旬は、晩秋から初冬にかけての寒い時期なのですが、夏には売り上げの落ちるウナギを、なんとか売りさばこうとしてできたお店の知恵だともいいます。
栄養価の高いウナギを、食が落ちる、夏の暑い日に食べるのは理にかなっていますよね。でも、これは万葉集の時代からあった習慣でもあるようです。
大伴家持のこんな歌から、それが分かります。
石麻呂に われ物申す 夏痩せに 良しといふものを むなぎを捕り食(め)せ
この「むなぎ」というのが「うなぎ」のことです。
また、石麻呂というのは、とても細い体の人で、どんなに食べてもなかなか太れない体質の人であったようです。
家持は、この石麻呂をからかって歌っているんです。
訳は、こんな感じです。
「石麻呂殿に、私は謹んで申し上げます。夏痩せに良いと言われるようですから、ウナギを捕まえてお召し上がりくださいませ」
石麻呂というのは、あだ名でした。
本名は、吉田連老(きちたのむらじおゆ)といって、家持とは父親どうしも親しい友人だったようです。
その細い体の石麻呂に、そんなにガリガリなんだから、ウナギでも捕って食べろと、敬語を使いつつ、からかっているのですね。
ちょっと人が悪いけど、仲良しのジョークとも本音ともいえる、友をおちょくってる感じが伝わってきます。
また、この歌の続きが、もう1首あります。
痩(や)す痩(や)すも 生けらばあらむを はたやはた むなぎを捕ると 川に流るな
「痩せに痩せても、生きているならまぁいいのかもしれないが、ひょっとして、ウナギを捕ろうとして、あまりの体の軽さに川の水に流されてしまうことのないようにしろよ」、という感じでしょうか。
どうみても、からかい度はアップしていますね。
なんだか、小学生レベル?という感じがしないでもないですが、親しいからこその言葉と受け止めておきましょう。
この2つの歌は、万葉集巻十六に入っていて、このあとに、他の作者による、からかい合戦の歌が続いています。
お互い、容姿のことを、からかい合っています。
石麻呂にも、家持に反撃した歌があればよかったのにと思うのですが、石麻呂は作らなかったのか、それとも家持が編集に取り上げなかったのか、などと想像するのも面白いですね。
さて、奈良市内には、うなぎの名店もいくつかあって、観光客でにぎわっています。
私が、イギリスやニュージーランドで出会った人のなかには、日本のウナギが恋しい、という人も何人かいて、意外に思ったことがあります。
イギリスでであったウナギの好きな女性についてはこちらです。
https://beauty-kireininaru4.com/english-study-abroad2/
ニュージーランドでも、ウナギを食べられないことはなかったのですが、たいていは中国産でしたし、本格的な蒲焼などを焼いているところはなかったと思います。
やはり、ウナギは日本で食べたいし、食べてもらいたいな、と思います。