- 投稿 2018/02/20
- 夢見のよい朝わるい朝
今朝は夢をみましたか?
どんな夢だったか覚えていますか?
京美はほぼ毎日、夢をみます。
ただ、
めざめる瞬間までハッキリ覚えていても、
起きて着替えて、トイレに行って、お湯を沸かして・・・と、
朝の支度をしているうちに、たいていのものは忘却の彼方へ。
食事のあとに、やれやれとお茶を飲みながら、
さてどんな夢だったっけと思い出そうとしても、
たいていの場合、その内容が脳によみがえることはないのです。
こわい夢だったとか、特別しあわせな夢だった場合は、
その感覚だけを覚えていることがあります。
そして、ごくたまに、いつまでも忘れられない夢というのもあります。
少し前にみた夢の舞台。
それは、中学3年生の学級会でした。
クラス裁判のようなものが行われているのです。
そのなかで、見覚えのあるクラスメイトの女子が、はっきりとした口調で、
自分の正当性を訴えていました。
彼女は、女子からも男子からも嫌われる傾向にあったコ。
嫌われた理由は、感情の起伏がはげしくて、
それを表そうとする言葉のせいでもありました。
口がたつのに、話す内容に嘘が多く一貫性がなかったから。
でも、
もっというと、何か起こると他人のせいにして、
自分はわるくないと主張するうえに、
心のどこかに自分はぜったいに許されるという甘えがあって、
それが言動にでているところがありました。
自分は頭がよくないから、助けられて当然だし、
許されて当然だという子どもっぽい理屈が、
早く大人になりたがっていた当時の大多数のクラスメイトにとって、
不快でしかなかったような気がします。
夢のなかで、誰かが言っていました。
「彼女の言うことは嘘かもしれない」
「え、嘘?あんなに堂々と話しているのに?」
そこで目が覚めました。
布団のなかで、なんでこんな夢みたんだろう、、と思い返しながら。
同時に、
彼女の性格を分析している自分って、なんて傲慢なんだろう。
今、述べた彼女の気質は、
結局のところ、自分自身が持っているものだと気が付いて、汗が出ます。
のろのろと起き上がって、
布団をたたみながら、なんだったんだこれ、
クラス裁判って、なんかテレビか映画とかにあったよなと、
なおも頭の端っこで考え続けていました。
映画「ソロモンの偽証」後編が、
その日の夜のテレビで放送予定だったことを知るのはこの後なのですが、
それより前に、思い出したことがありました。
裁判。
罪をあきらかにして、罰を宣告する場所。
真相を追求する気持ちが高じると、
人は、人を罰するのを好む傾向にあるのでしょうか。
思い出したのは、更にさかのぼって、
京美が小学校4年生くらいのときのことです。
クラスメイトのエムちゃんが、
好きな男の子にラブレターを書きたい、と言い出しました。
正直、エムちゃんとは、とくべつ仲がよかったわけではありません。
京美には、仲良しの友達が他にいました。
なのに、
そのときはなぜだか、エムちゃんと、
その周囲のコたちとひそひそ話していたのです。
そのときたまたま席が近かったとか、
何か授業のグループがたまたま一緒だったとか、
そんなところだったのでしょう。
エムちゃんラブレター書きたいんだって、と、誰かが京美に言いました。
でも、どうやって書いたらいいかわからないんだって。
京美ちゃん、作文じょうずだから、手伝ってあげてよ。
そんな展開だったような気もします。
あるいは、エムちゃん自身が、
なんて書いていいか分からないから、手伝って、
と言ってきてたのかもしれません。
すでに、手紙は何行か書かれていました。
この先がわからないのよね。
だれかがそう言ってもいました。
京美は、作文がとびぬけて上手だったわけではありませんが、
クラスのおたのしみ会で、桃太郎をもじった寸劇を作ったりしていたので、
それでグループを超えて、声をかけられたのかもしれません。
いや、
やっぱりたまたまその場に居合わせた、
ただそれだけのことだったのでしょう。
ですが、
特に断る理由もなく、
強いていえば、エムちゃんの好きな男の子は、
京美も少しいいな、と思っていたこともあって、
実のところ、とまどった気持ちもありました。
でも、とにかく人気の高い男の子だったし、
小学4年生のいち女子として、彼の反応をみてみたい、という好奇心もありました。
ラブレターを受け取った彼は、どんなリアクションをとるのだろう。
想像すると、それを実際に見てみたい誘惑にかられました。
その誘惑は、京美の書く言葉を、よりオーバーに、
劇的に、情熱的にならしめました。
恋の表現とは何か、よくわからないまま、
テレビのコマーシャルか何かをテホンに、思ってもいない虚の言葉が、
すらすらと浮かんできました。
エムちゃんは、それをたいそう気に入ってくれました。
みんなで一行ずつ書こうよ、と誰かが言いました。
京美の書いた、はげしい慕情の一節も、
ちょっと浮きながら並べられました。
そして、
出来上がったラブレターは彼の君の元に無事に届けられたのです。
エムちゃんは、きっと、返事を心待ちにしていたと思うのです。